医療法人社団 だいだい
アレルギー症状の原因となる物質を原料にエキスを抽出し、少量を継続的に体内に取り入れることで体質改善を図る治療法です。
現在はスギによる花粉症とダニによるアレルギー性鼻炎、2種類のお薬が開発されています。これまでの花粉症やアレルギー性鼻炎の治療法は、発症後にお薬を飲んだり目薬を点したりして症状を抑える対象療法しかありませんでした。対して舌下免疫療法は、完全に治すことができる唯一の根治的治療であると言われており、80%以上の方への効果が実証されています。
無味無臭のタブレット型のお薬を“舌の下”に約1分間保持して溶かし、飲み込みます。
この行為を2~3年毎日継続していただきます。安心して続けていただくために初回はクリニックで実際にお薬を使用し、約30分間待合室でお過ごしいただいて、かゆみや、アナフィラキシーショックなどの症状が現れないかを確認いたします。お薬の説明から薬局でのお薬の処方、身体の状態を診る30分間を合わせて約1時間お時間をいただくことになりますので、舌下免疫療法をお考えの方は時間に余裕を持ってお越しいただけますと幸いです。
初回に異常が見られなければ、その後はご自宅で実施していただきます。舌下免疫療法は1年目より2年目、2年目より3年目に効果が見られるので根気よく続けることが大切です。
10年ぶりに多いとされる年でした。2020年が少なかったので、昨年のお薬を処方すると“効かない”とおっしゃる方が多い印象でしたね。
舌下免疫療法でない場合、早期療法といって花粉が飛び始める前からお薬を飲むことが最も効果的とされているため、自分が花粉症とわかっている方であれば例年は2月頃から飲み始めますが、今年は飛散時期が早く2月には飛び始めたので重症化してしまった方も多く見受けられました。私(花粉症です…)を含め、今年は特にしんどかったと思いますね。
近年は1歳のお子さんでも、目をこすってくしゃみをしている時点で花粉症の疑いを持つようになりました。それには、高速道路の発達などにより排出量が増した大気汚染物質と花粉とを同時に吸い込んだり(アジュバント)、欧米化した食事によって抵抗力が落ちることで自己免疫疾患が増えたりといった原因が挙げられます。
地方に比べて都心の方が花粉症にかかる患者さんの低年齢化が進んでいます。
スギ花粉症の舌下免疫療法では『シダキュア』というお薬を処方いたします。
シダキュアはスギ花粉の飛散時期前後に使用を開始することができません。なぜなら、舌下免疫療法のお薬はスギ花粉を原料に作られているので飛散時期と重なると副反応が出やすくなってしまうからです。1月~5月は治療を開始できない時期だとお考えください。
ダニアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法に用いる『ミティキュア』というお薬は花粉症のように季節に関係することなく1年中いつでもできます。
口腔機能が整い血液検査が問題なくできる6歳以上を推奨しておりますが、医師の判断によって5歳から受けていただくことも可能です。
長い将来を考えると、5・6歳の幼児期に行えば小学校低学年までに服用を終えることができるので、花粉の飛散時期とばっちり重なる受験や就職活動の際に花粉症や花粉症対策に悩まされることがなくなります。服用可能な年齢に上限はありませが、現在のところ50代の方までが多いですね。
服用の前後2時間、激しい運動や発汗、アルコール摂取が禁止されています。これらの禁止事項を守れば、基本的にご自身のライフスタイルに合わせて服用いただくことができます。
夜にお風呂に入られる方は学校や職場から帰宅してすぐに服用していたり、朝に摂取したりしているようです。
2014年から保険適用となり、3割負担で診察代金と合わせて2,500円前後です。東京都では中学生以下の方は自己負担なしで処方できます。
お薬ははじめの1週間分が安全に終了しましたら一度に28日分まとめて処方させていただきますので、1カ月に一度を目安にクリニックへお越しください。
以前は免疫療法の治療方法が注射であったり、薬用冷蔵庫での保管が必須だったりして、留学などで定期的にクリニックに通えない方に支障をきたしていましたが、1カ月に一度のご来院にまで患者さんのご負担を減らすことができたのは医学の大きな進歩です。ただし、舌下免疫療法のお薬を処方できるのは資格を持つ医師とその医師が登録した病院・クリニックのみとなります。
私も、シダキュア、ミティキュアを開発した先生の講義を直に受けて資格を取得いたしました。当クリニック以外で処方をご検討される方は、かかりつけ医の先生に一度相談なさってくださいね。
ごくまれに息苦しさや蕁麻疹などの症状が見られるアナフィラキシーショックを起こしたという報告があるようですが、当クリニックでは現在のところそのような重症例は見られていません。
お薬に関してしっかりと理解していただければ安全に服用していただけます。以前に注射で行っていた免疫療法と比べてみると副反応を引き起こす確率の低さは変わりませんが、針を刺した際の痛みや腫れなどを加味すると、舌下免疫療法の錠剤の方が副反応を抑えられるということができると思います。
中断期間が1カ月以内であれば、そのまま再開していただきます。1カ月以上の期間が空いてしまった場合には、お薬の濃度を弱めたものから再開し、再度継続をめざしていただきます。
その際の費用負担は初診料と同じくらいです。
スギ花粉症、ダニアレルギー性鼻炎の治療について現在のところ舌下免疫療法は最も効果的であるとされていますが、まずは鼻水は鼻閉型なのか鼻汁型なのか、のどの腫れはどうか、持病はあるか、授乳中ではないかなどを診察で確認し、患者さんにあったお薬を処方させていただいております。
かかりつけ医として当院をご利用いただいている方には、身体の調子やお薬の飲み合わせの観点から最善の治療方法を検討していきます。また、お薬の服用中に体調が悪くなった際は、日中であれば当クリニックにご連絡いただき、診察時間外や夜間は東京ベイ・浦安市川医療センターにご連絡いただければスムーズに対応できるよう連携を図っています。
また、舌下免疫療法を行う患者様にはカード(写真①)を持ち歩いていただくようお願いしており、急な体調の変化があった際はかかりつけ医以外のどの医師でも状況を把握できるようにしています。
ハウスダストアレルギー専用のお薬ができれば、喘息をお持ちの患者さんの負担を軽減できるなぁと思い描いています。
ほかにも、犬・猫アレルギー、ブタクサにお困りの方も多くいらっしゃいます。新しいお薬ができて日本で認可されたらすぐに取り入れたいですね。
舌下免疫療法に適齢期はございませんが、根治的治療であることを考えると早ければ早いほど意味を成す治療法ではあると思っています。
幼児期のお子さんが服用される際には保護者の方にお薬をあげていただくことになるので、不安なことやお悩みはひとつひとつ一緒に解決していけたらと思っています。
お子さんが健やかでないとご家庭も健やかではなくなってしまうものですから。患者さんとコミュニケーションを大切した診察を心掛けて参りますので、些細なことでもお気軽にご相談いただけますと幸いです。